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2006年10月21日 (土)

ヒッチコックの「バルカン超特急」は時代を感じさせるもののやはり楽しい傑作だ

奥日光か那須へ紅葉でも日帰りで見物に行こうかと考えていた
が、混みそうだし天気も今ひとつだったので止めて、家で映画の
ビデオ鑑賞に。先ずはヒッチコックの「バルカン超特急」を。淀川
長治の選んだ世界の名画100選とかいうDVDシリーズの1本。

ナチス同盟国を想定したかのような架空の国からロンドンへ向か
う列車の中でミス・フロイという一人の英国人老婦人が消え失せ
る。列車内でフロイと同コンパートメントだったアメリカ人女性アイ
リスは、フロイの行方を探すが、乗客や乗員も老婦人などいなか
ったと言う。しかし、食堂車の窓に残った老婦人が指で書いた文
字で老婦人の存在を確信して探すアイリス。ギルバートという青年
だけが助けてくれて必死の捜索が続く。失踪の謎と人間入れ替え
のトリックなども。コメディ、サスペンス、ミステリー、アクション、そ
してロマンスと楽しさあふれる作品。ヒッチコックのイギリス時代
作品としては「三十九夜」と並ぶ代表作か。

巻頭の雪に埋もれたイタリアアルプスの駅周辺のミニチュアと歴
然のシーンなど時代を感じさせる。いまならCGをフル活用して一気
に映画の世界に引き込む絵作りができるだろう。

ちょっとコミックタッチが入っているのも楽しい。豪雪で立ち往生し
たためホテルで宿泊することになった乗客たち。突然のことで部屋
や食事が足りなくててんやわんやのホテル描写でさりげなく登場
人物たちのキャラなどをコミカルな味わいたっぷりに描き、その間
に話のネタである架空の国の情報を英国に持ち帰るための暗号の
歌を英国スパイである老婦人がギター弾きから受け継ぐシーンを
挿入する上手さ。また、ホテルマンがアメリカ人3人娘の部屋へ
入って来た時に娘たちが下着姿ではしゃいでいるのも制作の1938
年頃としてはかなりかわいいエロチックさ。ヒチコックのスケベぶり
が出ている。英国人のおじさん二人組の描写もホモっけありがちょ
っと怪しい。

「レディ・バニッシュ/暗号を歌う女」として70年代末期にエリオッ
ト・グールド、シビル・シェパード、「ジェシカおばさん」のアンジェラ・ラ
ンズベリーでリメイクされた。出来は悪くはなかったが、オリジナルの
すっとぼけた味わいには及ばなかった。この作品など筋をもう一つひ
ねり、設定も現代にして失踪の謎、入れ替えの方法などを思い切り
斬新なアイデアを組み込んでリメイクすれば面白くなるのでは。テレ
ビドラマのリメイクよりよほど期待できるのだが。

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コメント

viva jijiさんのところから参りました。
姐さんとは半年前に知り合ったばかりですが、相当やりとりしています。
この作品はヒッチコックでもトップクラスの傑作で、観た時の環境もあり、私のヒッチコックNo.1です。
TB致しましたが、現時点では反映されていません。
ヒッチコックについては50本映画評を書いております。

投稿: オカピー | 2006年10月28日 (土) 01時42分

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» 映画評「バルカン超特急」 [プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]]
☆☆☆☆☆(10点/10点満点中) 1938年イギリス映画 監督アルフレッド・ヒッチコック ネタバレあり [続きを読む]

受信: 2006年10月28日 (土) 01時38分

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ベイコム名画劇場で「アルフレッド・ヒッチコック」監督作品の『バルカン超特急(原題:The Lady Vanishes)』を放映していました、、、 [バルカン超特急(原題:The Lady Vanishes)] ここ最近、週末には「アルフレッド・ヒッチコック」監督作品を放映しているようですね… この作品も「アルフレッド・ヒッチコック」監督作品の中でも、大好きな作品のひとつです。 [バルカン超特急(原題:The Lady Vanishes)] 物語のプロットが奇抜で面白い… 列車から老婦人が消えてし... [続きを読む]

受信: 2017年7月 1日 (土) 17時00分

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