ヒッチコックの「バルカン超特急」は時代を感じさせるもののやはり楽しい傑作だ
奥日光か那須へ紅葉でも日帰りで見物に行こうかと考えていた
が、混みそうだし天気も今ひとつだったので止めて、家で映画の
ビデオ鑑賞に。先ずはヒッチコックの「バルカン超特急」を。淀川
長治の選んだ世界の名画100選とかいうDVDシリーズの1本。
ナチス同盟国を想定したかのような架空の国からロンドンへ向か
う列車の中でミス・フロイという一人の英国人老婦人が消え失せ
る。列車内でフロイと同コンパートメントだったアメリカ人女性アイ
リスは、フロイの行方を探すが、乗客や乗員も老婦人などいなか
ったと言う。しかし、食堂車の窓に残った老婦人が指で書いた文
字で老婦人の存在を確信して探すアイリス。ギルバートという青年
だけが助けてくれて必死の捜索が続く。失踪の謎と人間入れ替え
のトリックなども。コメディ、サスペンス、ミステリー、アクション、そ
してロマンスと楽しさあふれる作品。ヒッチコックのイギリス時代
作品としては「三十九夜」と並ぶ代表作か。
巻頭の雪に埋もれたイタリアアルプスの駅周辺のミニチュアと歴
然のシーンなど時代を感じさせる。いまならCGをフル活用して一気
に映画の世界に引き込む絵作りができるだろう。
ちょっとコミックタッチが入っているのも楽しい。豪雪で立ち往生し
たためホテルで宿泊することになった乗客たち。突然のことで部屋
や食事が足りなくててんやわんやのホテル描写でさりげなく登場
人物たちのキャラなどをコミカルな味わいたっぷりに描き、その間
に話のネタである架空の国の情報を英国に持ち帰るための暗号の
歌を英国スパイである老婦人がギター弾きから受け継ぐシーンを
挿入する上手さ。また、ホテルマンがアメリカ人3人娘の部屋へ
入って来た時に娘たちが下着姿ではしゃいでいるのも制作の1938
年頃としてはかなりかわいいエロチックさ。ヒチコックのスケベぶり
が出ている。英国人のおじさん二人組の描写もホモっけありがちょ
っと怪しい。
「レディ・バニッシュ/暗号を歌う女」として70年代末期にエリオッ
ト・グールド、シビル・シェパード、「ジェシカおばさん」のアンジェラ・ラ
ンズベリーでリメイクされた。出来は悪くはなかったが、オリジナルの
すっとぼけた味わいには及ばなかった。この作品など筋をもう一つひ
ねり、設定も現代にして失踪の謎、入れ替えの方法などを思い切り
斬新なアイデアを組み込んでリメイクすれば面白くなるのでは。テレ
ビドラマのリメイクよりよほど期待できるのだが。
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コメント
viva jijiさんのところから参りました。
姐さんとは半年前に知り合ったばかりですが、相当やりとりしています。
この作品はヒッチコックでもトップクラスの傑作で、観た時の環境もあり、私のヒッチコックNo.1です。
TB致しましたが、現時点では反映されていません。
ヒッチコックについては50本映画評を書いております。
投稿: オカピー | 2006年10月28日 (土) 01時42分