お気に入りの映画「悪魔のいけにえ」を久しぶりに見る。やはりこれは究極の嫌悪感催すホラー
「テキサス・チェーンソービギニング」という映画が現在公開中。「エ
クソシストビギニング」や「バットマンビギンズ」などのようにかつて
の映画の話のさらにその前を描くはやりのひとつ。見に行こうかなと迷
っているのだが、見る前からまあその内容の予想がついてしまいそうで
どうも気が乗らない。なんといっても、この前編に当たる3年ほど前に
作られた映画「テキサス・チェーンソー」の続編だからだ。その「テキ
サス・チェーンソー」自体がリメイクで、オリジナルの74年制作の
「悪魔のいけにえ」に比べて、シンプルまでにスプラッタームーヴィー
になりすぎていた。しかし、あの「悪魔のいけにえ」の持っていた独特
の味わいとはほど遠かった。ということで、特別大好きな映画ビデオ
を並べてある棚から「悪魔のいけにえ」を。政治もアベシン
ゾーあたりの薄のろがでかい顔でのさばり、株式も面白くも何とも
ないこの現状では、この手の快作を観て憂さ晴らしが一番だ。
映画公開当時初めて観た時にはトビー・フーパーという監督の名もまっ
たく知らないし、「悪魔のいけにえ」のいかにもB級そのもののタイトル
に期待もそれほどなかった。確かちょっとその前に観た「悪魔のはらわ
た」という映画みたいなものかと考えていた。何しろその「悪魔のはら
わた」はオバカホラーコメディーだったし、配給会社も同じヘラルドだ
ったしね。
しかし、観た「悪魔のいけにえ」は期待はずれどころから、空前絶後の
大傑作。たった85分程度の安上がりの造りの映画なのだが、観たあと
のぐったりとした精神的疲弊、後々まで脳内で渦巻く映像が喚起するそ
れまでに観た映画にはなかった単なる恐怖ではない嫌悪感はすさまじい
ものがあった。作り手のパワー全開を感じたものだ。
内容は実際にあった大量殺人事件を下敷きにしたもので、テキサスのど
田舎をドライブ中の若者グループが人肉食趣味の狂気の殺人鬼一家に捕
まって惨殺されて行く、現在ではおなじみの話。その一家の一人の大男
が人間の顔の皮を被り、電動ノコギリをふりかざして女性を追いかけま
わすシーンのド迫力、逆光の中ノコギリを振り回す大男の狂気の姿で突
然の終わりもあまりに即物的描写にうなったものだ。この大男はその後
レザーフェイスとか言われるようになる有名人に。
巻頭の腐乱死体を断続的なフラッシュ光で見せるところから、これはか
なり行けそうだなという予感が。若者グループが拾ったヒッチハイクの
男が車内で唐突にナイフで自らの体を傷付けるシーンに始まり、殺人一
家の中に入った若者一人がレザーフェイスに突然ハンマーで頭を殴られ
て足をけいれんさせるシーン、女の子の一人が肉を引っ掛けておく大き
な鉤に生きたままごく当たり前のように肉の固まり同然に吊り下げら
れるシーンなど恐怖というより神経をギリギリと痛めつけてくるような
嫌悪感はそれまで観たこともない映像。映画館では途中であまりの気持
ち悪さに退席する人が多々。あんなのは映画鑑賞でも初の経験だった。
その嫌悪感に加えて、死にかけの半ミイラ状態のオヤジがハンマーで女
の子の頭を殴ろうとするが、手の力なくハンマーがかすれて落ちるだけ
のシーンの恐怖と混じった引きつるしかない笑いなど観る側をへとへと
にさせていくシーンの連続。
しかし、この映画にはその後にスプラッタームーヴィーと言われる一連
のホラー映画のような血みどろのシーンはほとんどない。電動のこぎり
で車いすの青年を殺すシーンでもまったく血など見せず、直接的な残酷
映像もない。しかし、それだけに観る側の想像力をより刺激してしまう
のだ。この映画以降のスプラッタームーヴィーがあまりに直接的な惨殺
映像を見せてしまうことによって想像力を喚起しないことで恐怖感がか
えって消えて行くのとはかなり違うのだ。
この映画以降この映画を超える真の意味での恐怖映画はいまだに 出てい
ない。フーパー監督自体がこの作品でその才能を使い果たしたかのよう
な映画しか作れていない。とにかくこれを超えることは無理。この映画以
降では 恐怖映画はお笑いと紙一重のものにならざるをえなかったのがそ
の 証でもある。 公開当時から何回観たことか。観るたびに新鮮さは少し
も失われない。今回も久しぶりに観て素晴らしさを堪能できた。ただ、家
人はこの手のホラーが大の苦手なので、大きな音響で観たいのだが深夜
に一人でヘッドフォンで観るしかないのが残念なところ。ところで、肝心
の映画「テキサスチェーンソービギニング」は出来はともかくやはり観た
くなってきた。でも、ビデオで「悪魔のいけにえ」の逆進化系の大傑作で
ある「ブレインデッド」を観るのも面白いか。
| 固定リンク
コメント
どうもはじめまして。
訪問、コメントありがとうございました。
来るのが遅れました~。
いやぁ、『悪魔のいけにえ』 は、まさにおっしゃるとおりです。
自分も同じ感想です。
劇場では一度しか観てないんですが、まだあの時の怖さを覚えてますもん~。
まだこれを超えるホラーにはお目にかかってません~。(・ω・)bグッ
投稿: Kaz. | 2008年2月17日 (日) 22時28分