今までの007とはまったく別ものの「007カジノロワイヤル」はアクション映画として最高に面白いものとして蘇った
「ロード・トゥ・パーディション」などでちょっと影のあるキャラを脇で地
味に演じて来たイギリスのいわば性格俳優とも言うべきダニエル・クレイグ
がピアース・ブロスナンに代わって第6代目ジェームズ・ボンドを演じる
「007カジノロワイヤル」はシリーズ第21作目。これまでのシリーズと
は打って変わってのシリアスな味わいのアクション映画へ大変身。このシ
リーズはショーン・コネリーの時代から世界征服を企む国際犯罪組織スペク
ターなんてマンガチックな敵があったり、ロジャー・ムーア時代には宇宙に
まで飛んで行くほとんどファンタジー漫画の世界にまで変身して行ったりと
かなりコミックの味わいのある映画だった。
もっとも評価の高いコネリー・ボンドにしてもかなりマンガチック。それ
がムーア・ボンドでマンガチックさがさらに倍増。ティモシー・ダルトンで
ちょっとシリアス路線に行ったが、意外に評価高まらず、グンとオシャレで
粋な雰囲気のあるピアース・ブロスナンへ。ブロスナン・ボンドも当初想像
したよりは意外に健闘した。
それが今回はマネー・ペニーも秘密兵器発明家Qもいないし、ボンドカー
のアストンマーチンにも別に秘密兵器が仕込まれている訳ではなく、なぜか知
らないがAED(除細動器)が設置されている。それがその後一応ボンドの危
機を救うことにはなるが、これはいわゆる秘密兵器ではないよね。007
ファンとしては一つぐらい面白い秘密兵器でも登場してほしかったなとは思
う。まあそれが登場すると今回からのイメージ大変身にはそぐわないものに
なってしまうけど。以前からの007ファン、新しいファン両方を満足させ
るのはなかなか難しいけどね。タイトルバックも女性の裸体などのシルエッ
トが浮かぶエロチックなものではなく、カジノを舞台にしたそのもののトラ
ンプのイメージワークで、エロチックなのを期待の向きにはちょっと期待は
ずれ。しかし、映画のイメージにはぴったり。
とにかくアクション映画としてはかなりの面白さだ。ダニエル・クレイグ
も相当体を鍛え直したのだろうが、水着姿を2回ほど見せて、その鍛えられ
た上半身を誇らしく見せるし、後半での男なら痛みが見ているだけでジンジ
ン感じてしまう究極の拷問にあう場面では全裸姿にまでなる。あのシーンな
どその手の趣味(といってもホモっ気とSMと2種類あるが)の人にはかな
り楽しめるかも。
今回のボンドはとにかく全編を通じて良く走る。走り抜く。アクション映
画を通じてももっとも力強く走ったのではないだろうか。しかも単に走るだ
けでなくその先には全力で走るトラックに飛び乗ったりと過激なアクション
へ繋がって行き、敵との激しいアクションへ発展する。このアクションに継
ぐアクションのつるべ打は、冒頭の爆弾の入ったリュックを背負ってまるで
スパイダーマンまがいの動きで逃げ回るテロ犯人を追いかけるシーンから全
開だ。この冒頭の逃げる犯人の運動神経は凄すぎるのだが、それを追跡する
ボンドの運動神経と反射能力もあっと驚くほどで、これまでの007像を一
新するのにふさわしく、観ている客に一気に新ボンドを納得させてしまい、
映画の世界へすんなり入って行ける。それに、これまでのボンドならいくら
アクションを繰り広げてもケガ一つ負わず、衣装さえ乱れないほどだった。
しかし、今回のボンボは違う。ケガだらけ、拷問のあとは療養生活までして
しまう。生身の人間になっているのだ。
タキシードスーツを着たとき鏡を見ながら身なりを整える際のウブなボン
ドなど可愛いぐらいだ。ダニエル・クレイグはいわゆるキザな二枚目では
まったくないが、悩みもする生身の人間としてのスパイとしてかなり良い味
わいを出しているのではないだろうか。すでに007が登場して45年ほ
ど。まったく異質なボンドになっても良いのではないだろうか。「ダイ・ハー
ド」が登場したあとの007シリーズはなんだか観ていて常にアクション映
画として物足りなさが残っていた。アクションそのものはあってもボンド
自身が生身の体で動くアクション映画としてはもう観ることが出来なく
なっていた。それが今回のクレイグ・ボンドで真の意味のでアクション映
画としてこれまでの007とはまったく違うものとして蘇ったのだ。
悪役もテロ組織の資金を預かり株式売買などで膨らませるというかなり現
代的というか世界征服を企む組織などと比べせこいと言えばせこいのだが、
それも良いのではないだろうか。かえってリアル感が漂う。ダニエル・クレイグ
の次回ボンド出演も期待したい。観た映画館が入れ替えの映画館ではない
ので、巻頭のほれぼれするような追いかけを含むアクションをもう一度観たく
て2回立て続けに観てしまったが、それでも飽きなかった。エヴァ・グリーンも
「キングダム・オブ・ヘブン」のときよりもその美貌が活かされていて、ボンド
が惚れ込んだのも納得だった。
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