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2007年2月14日 (水)

映画「それでもボクはやってない」は日本の裁判制度、冤罪問題をさりげなく抉る傑作。植草事件を想起させる

昨日見て来た映画の一つが「Shall We ダンス?」以来11年ぶり
になるとかの周防正行監督の最新作「それでもボクはやってない」だ。すで
に公開されてから日時が立つこと、平日もあってかガラ空きであった。映画
自体はかなり楽しめたし、深刻な冤罪問題を淡々とした描写と巧まざるユー
モア感覚もまぶして、裁判制度にまったく無知な人間にも観ているだけで犯
罪から裁判へ行くプロセスをお勉強できるだけでなく、日本の裁判制度の問
題にも意識せざるをえなくなる問題提起的社会派映画としてもかなり出来が
いい。社会派映画をことさら掲げていないのがかえって反発なく問題を考え
ることができる理想型でもある。

冤罪問題は昔から刑事法、裁判制度におけるもっとも深刻な問題だ。それは
死刑制度の是非を根底から判断する際にも大きな要因となって来た。死刑判
決が出て確定し、処刑されればその人間が無罪とあとで分かっても生き返ら
せることはできない。これまでにもそのような冤罪問題が多く発生して来
て、本などにもなっている。世界的にも有名な事件は「サッコ・ヴァンゼッ
ティ事件」というのがある。神でない人間が死刑を判断する。そこに誤謬は
避けられない。冤罪による死刑を避けるためにも死刑廃止が大きな問題と
なってきた。

もともと刑事訴訟では被告人は判決確定までは無罪推定が働く。しかし、報
道でも逮捕されれば名前が晒され、その時点で真犯人扱いだ。いったん刑事
事件で起訴されれば日本の裁判制度では無罪になる確率は限りなく小さい。
警察、検察と言う国家権力を背景に事件を捜査し、起訴した以上国家として
負けるわけにはいかない。だから起訴は有罪確率が高いものとなる。しか
も、日本の検察では不起訴処分というのが大きな部分を占める。微罪や初犯
では不起訴処分で事件がゼロになる制度だ。これで多くの人間が救われるこ
ともあるが、反対に権力に都合の悪い犯罪は隠蔽される手段にもなる。裁判
になれば、独立のはずの裁判官も実質的には国家の一員。起訴した国家の意
思に逆らうのは至難だ。どうしても検察サイド寄りの見方にならざるをえな
い。そして、最終判断をするのは裁判官。冤罪が起きる制度的欠陥が基本的
に潜在化しているのが日本の裁判制度だ。

そんな大きな日本の裁判制度と冤罪問題をこれほど分かりやすく描いたもの
はこれまでの映画にはなかった。死刑まである犯罪ではなく、電車の中での
痴漢と言う日常的な犯罪を大きな問題を描く触媒にしたのも映画的面白さに
貢献した。これがもっと重大犯罪ならシリアスすぎる映画になっただろう。
痴漢でも冤罪に巻き込まれた本人にとっては人生を破壊する事件だ。しかし
あまりにも誰にも降り掛かる事件だけに、観る側にも裁判制度の問題がより
身近に感じ取ることができる。まさに周防監督の作戦勝ちだ。

この映画を観て、日本の現在でもまるで同じような案件で冤罪ではないの
か、政府によるはめ込みではないかと疑惑の目で見られているのが経済評論
家・植草一秀の痴漢事件だ。この映画の状況と実に瓜二つだ。瓜二つという
より、よりいっそう冤罪の臭いがコイズミ一派の腐臭とともに臭いたつ事件
だ。コイズミ一派の売国的経済政策を執拗に批判していた植草教授。コイズ
ミマンセーのマスゴミばかりの中でこれほど政権にとって邪魔な存在はな
かった。しかし、女性の一言があればはめ込みできるのだ。しかも、無罪を
主張すればするほど長い間拘留されてしまう。その恐怖はこの映画が実に巧
みに描いている。理想的な裁判官とも言える裁判官が突然更迭されて、被告
人を最初から有罪としか観ない裁判官に突然変わる部分などまさしく権力の
やりたい放題がさりげなく描かれる。

この映画を観たあとは、混んだ電車に乗るのに恐怖感を覚えてくるのではな
いだろうか。そう、誰にも降り掛かるからだ。意地の悪い女達が遊びのつも
りで無辜の男性をいつでも血祭りに上げられるのだから。混んだ電車に乗っ
た時には、女性の後ろなどには絶対いないこと、立つ時には女性のいない隅
で、しかも両手は何かを持っているか釣り革を持つか、外の方を向いている
こと。とにかくちょっとでも馬鹿そうで意地の悪そうな女の近くには行かな
いこと、その側も通らないことが肝要だ。いや、馬鹿な女だけではない。と
にかく女はすべて電車の中では痴漢冤罪の敵だと思うようにしたほうがい
いだろう。混んだ電車の中では女性性悪説であることだ。予防が一番だ。混
む時間帯には女性専用車ではなく、実際は男性専用車が1編成に数車両
欲しいぐらいだ。

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